① OpenAI、反発受け組織再編を撤回
ChatGPT開発元のOpenAIは、営利企業への移行を目指した組織再編計画を撤回しました。非営利部門が引き続きChatGPTなどの製品を統括する方針で、創業理念を維持するため投資家からの圧力に配慮した形です。この決定にはElon Muskらによる反発も背景にあり、OpenAIは巨額の投資を確保しつつも収益性と理想の両立を図る構えです。なお、ソフトバンクなどによる数百億ドル規模の出資計画にも影響するとみられます。
https://www.wired.com/story/openai-announce-nonprofit-structure-sam-altman/
② OpenAI、AIコード支援ツール「Windsurf」を約30億ドルで買収へ
OpenAIが、プログラミング支援に特化したAIツール「Windsurf」を約30億ドル(約4,000億円)で買収することで合意しました。Windsurfは「Codeium」として知られる新興企業で、ソフトウェア開発者がAIを活用してコードを書くのを支援します。今回の買収はChatGPTのコード生成機能を強化する狙いがあり、OpenAIにとって過去最大規模の買収案件となります。競合とのAI開発競争が激化する中での戦略的な動きです。
③ IBM、AIエージェント戦略と米国への巨額投資を発表
IBMは、自社のAIモデル群「Granite」などを活用し、企業が複数のAIエージェント(自動実行型AI)を統合管理できる新ツールを発表しました。営業や人事など様々な業務で複数AIを連携させるニーズに応える狙いです。CEOのアービンド・クリシュナ氏は、同社の生成AI関連ビジネスが既に60億ドル規模に達したことを明らかにし、今後5年間で米国に1,500億ドル超を投資する計画も示しました。
https://www.reuters.com/business/ibm-ceo-makes-play-ai-market-more-us-investment-2025-05-06/
④ 米FDAとOpenAI、医薬品審査へのAI活用を協議
米食品医薬品局(FDA)は、創薬や薬の承認審査にAIを活用できないかOpenAIと協議しています。FDA長官は「新薬の市場投入に10年以上かかる現状をAIで短縮できないか」と問題提起し、実際に一部製品でAIを用いた科学的審査も始めたことを明かしました。当局は「cderGPT」と呼ばれるプロジェクトに着手し、AIで糖尿病や癌治療の承認プロセスを効率化できるか探っています。
https://www.wired.com/story/openai-fda-doge-ai-drug-evaluation/
⑤ トランプ政権、バイデン時代のAI半導体輸出規制を撤回へ
トランプ米政権が、バイデン前政権下で策定された高度AI半導体の輸出規制(AIディフュージョン規制)を撤回する方針であることが報じられました。この規制は特定の国への先端AIチップ輸出を制限するもので、NVIDIAなど米半導体企業や同盟国から反発を招いていました。新政権は規制を見直し、中国以外の友好国には交渉を通じてチップ提供を柔軟に認める新ルール策定を目指すとされています。
⑥ Meta、顔認識「スーパーセンシング」機能搭載の次世代スマートグラスを開発か
Meta(旧Facebook)が、AIを活用して常時周囲を認識する次世代スマートグラスを開発していると報じられました。社内で「スーパーセンシング」と呼ばれる機能により、見た人物を名前で認識したり、持ち物を忘れると声かけしたりすることが可能になるようです。常時カメラやセンサーが作動するためプライバシーへの懸念もありますが、Metaはリスク評価プロセスを見直しつつ技術開発を進めていると伝えられています。
⑦ NBC、NBA放送に故ジム・フェイガン氏のAI音声を採用
米NBCスポーツは、1990年代にNBA中継のナレーションを担当した故ジム・フェイガン氏の声をAIで再現し、今後のNBA放送で使用すると発表しました。フェイガン氏は2017年に逝去しましたが、彼の重厚な声をAI合成技術で蘇らせることで往年のファンのノスタルジーに応え、新世代にもその魅力を伝える狙いです。NBCスポーツ社長は「家族と協力して彼の声を復元できた」と述べ、AI活用による過去の名声の継承に意欲を示しています。
⑧ SoundCloud、楽曲をAI学習に利用できる規約変更で物議
音楽配信サービスのSoundCloudが、ユーザーの楽曲をAIモデルの訓練に利用できるよう利用規約を改定していたことが判明し、批判を招きました。新規約にはアップロードされた音源を「AIの情報源や訓練に使用できる」との条項が追加されました。利用者から反発の声が上がったことを受け、同社は「実際にはアーティストの楽曲をAIモデルの学習に使ったことはなく、今回の文言はレコメンドや不正検知など自社機能へのAI活用を明確にするためだった」と説明しています。
https://techcrunch.com/2025/05/09/soundcloud-changes-policies-to-allow-ai-training-on-user-content/
⑨ 新ローマ教皇レオ14世、AIを法王名の由来の一つと明かす
ローマ教皇に選出されたレオ14世は、自身の選んだ教皇名に人工知能(AI)が関係していることを明らかにしました。枢機卿会議への就任演説で、産業革命期の教皇レオ13世に倣い「現代の技術変革に取り組む決意」を示すためこの名を選んだと説明し、AIが現代における大きな課題であると位置づけました。前教皇がAIに関する教会の見解を示してきたことを踏まえ、レオ14世は任期中にAIを教会の重要議題としてさらに深く扱う意向も示しています。
https://www.theverge.com/news/664719/pope-leo-xiv-artificial-intelligence-concerns
⑩ OpenAIの企業導入が急拡大、競合を大きくリード
企業による生成AIサービスの採用状況で、OpenAIが他社を大きく引き離していることが調査で分かりました。フィンテック企業Ramp社の法人決済データ分析によると、今年4月時点で米企業の32%がOpenAIの有料サービスを利用しており、1月の19%から急増しました。一方、Anthropic(Claude)を利用する企業は8%、Googleの生成AIはわずか0.1%と伸び悩んでおり、ChatGPTを提供するOpenAIの市場独走が浮き彫りとなっています。
編集者コメント
最近のニュースを見て、新しいローマ教皇が誕生したんだな。トランプ大統領に苦言を呈していたこともある人なんだな・・・どんな影響があるんだろう?くらいの気持ちで見ていましたが、レオ14世という名前の由来に「AI」が関係しているというのには驚きました。
「AI」が関係しているというよりは、本文にもあるとおり、昨今のAIによる変化、これから起こりうる問題に取り組む=産業革命時の社会課題に取り組んだ、その当時の教皇レオ13世(在位:1878年2月20日 - 1903年7月20日)に倣ったということです。もう少し調べて見ると、レオ13世は過酷な労働環境の是正や、企業・国家の経済活動に対する道徳的指針を打ち出すなど、積極的に社会問題に介入していたとのこと。
現代においては、「AIの倫理」「自動化による雇用への影響」「データプライバシー」といった課題が山積しています。教皇レオ14世の選択は、単なる称号の刷新ではなく、教会がテクノロジーの光と影—特にAIがもたらす恩恵とリスク—に真正面から向き合う覚悟を示したものと言えるでしょう。私たちもAIを扱う一人として、深く考えさせられるニュースでした。