① IBM、AIスタートアップ「Seek AI」を買収し企業向けAIを強化
IBMは自社のAI事業強化のため、企業内データに自然言語で質問できるシステムを提供するスタートアップ「Seek AI」を買収しました。買収額は非公開ですが、同日ニューヨークに新設したAIアクセラレーター「Watsonx AI Labs」で、この技術を活用するとしています。IBMはAI分野への投資を拡大しており、今回の買収も企業向けAI需要の高まりに対応する戦略の一環です。
② 米X社(旧Twitter)、AI開発向けの無断データ利用を禁止
イーロン・マスク氏が率いるSNS「X(旧Twitter)」は、AIモデルの学習に同社のプラットフォーム上のデータを使用することを禁止する新規約を制定しました。開発者向け規約に「XのAPIやコンテンツを大規模言語モデルの訓練に利用してはならない」との条項が追加され、外部AIがTwitter投稿を無断で学習素材にすることを明確に禁じています。この措置は、生成AIモデルの開発企業がデータを大量収集(スクレイピング)する動きに対抗し、自社コンテンツの無断利用を防ぐ狙いがあります。
③ OpenAI、ChatGPTにビジネス向け新機能「コネクター」追加
ChatGPTを提供する米OpenAI社は、企業での利用を見据えた新機能を発表しました。一つは「Connectors(コネクター)」と呼ばれる機能で、ユーザーがChatGPTをGmailやOutlook、Googleドライブ、Dropbox、GitHubなど社内外のツールと連携させ、自分のデータに基づいた回答をリアルタイムに得ることができます。もう一つは会議の録音と文字起こしを行い、要点を整理してアクション項目を自動生成する「Record Mode(レコードモード)」です。これらにより、社員が日常業務でAIを活用しやすくなり、作業効率向上が期待されています。
④ AIコード支援ツール開発のAnysphere社、約1兆円評価で大型資金調達
AIによるプログラミング支援ツール「Cursor」を手掛ける米スタートアップAnysphere社が、約9億ドル(約1,250億円)の資金調達を実施し、評価額が約99億ドル(約1兆円)に達しました。創業3年目の同社はAIブームに乗り急成長しており、年間売上高は5億ドル(約700億円)を超えています。著名VCの参画する今回の巨額調達により、ソフトウェア開発支援AI分野で同社は今後さらに開発を加速させる見通しです。
⑤ アマゾン、人型ロボットでの配送実験を計画か
米Amazon社が配送業務への人型ロボット導入を見据え、関連ソフトウェア開発やテスト施設の準備を進めていると報じられました。社内情報によると、サンフランシスコのオフィス内に障害物コースを備えた「ヒューマノイド・パーク」を建設し、ロボットが荷物配送できるか検証する計画です。当面ロボットのハードウェアは外部企業製を使用し、Amazonは人工知能のソフト面を開発するとのこと。実現すれば、倉庫から配達まで一貫してロボットがこなす未来も視野に入ります。
⑥ Reddit、AI企業Anthropicを提訴 〜 無断データ使用で
米オンライン掲示板Redditは、AIスタートアップのAnthropic社(ChatGPTの競合AI「Claude」の開発元)を相手取り訴訟を起こしました。Reddit側の主張によれば、Anthropic社はサイト上のユーザー投稿を許可なくクローリング(自動取得)し、自社のAIチャットボットの学習に利用したとされています。Redditは以前からデータの有償提供を求めており、同様にデータ無断使用を巡っては他の生成AI企業に対しても出版社や著作者から訴訟が相次いでいます。
⑦ グーグルの医療AI、医師を上回る診断精度を示す
米Google DeepMindが開発した医療診断AIシステム「AMIE」が、医師の診断精度を上回ったとの研究結果が報告されました。このAIは大規模言語モデル(LLM)を活用し、患者との対話や検査結果の画像解析を行うもので、一般診療医(プライマリケア医)と比較した評価試験でより正確な診断ができたケースがあったとされています。専門誌『Nature』に発表された論文によれば、診断の正確さや対話の質でAIが複数の評価項目で医師を上回りました。医療現場でAIが診断支援する時代が現実味を帯びています。
https://www.elektormagazine.com/news/ai-surge-2025-superhuman-doctors-multimodal-ai
⑧ 新AIモデル「Boltz-2」、創薬スピードを飛躍的向上
米MITの研究チームは、新しいAIモデル「Boltz-2(ボルツ・ツー)」を開発しました。このモデルは、薬剤分子が標的タンパク質とどれほど強く結合するかを予測するもので、従来の物理シミュレーションに匹敵する精度を保ちながら予測速度を1000倍以上に高めることに成功しています。Boltz-2は実験データに基づき学習しており、早期の創薬候補スクリーニングに要する時間とコストを劇的に削減できる可能性があります。さらにモデルのコードや学習済みパラメータも公開される予定で、研究者はこの成果をオープンソースとして広く活用できる見通しです。
https://aibusiness.com/nlp/mit-unveils-ai-breakthrough-in-drug-discovery-with-new-model
⑨ 中国、高考(大学入試)期間にAI機能を一時停止しカンニング防止
中国で6月7日から始まった大学入学統一試験「高考(ガオカオ)」に合わせ、現地の大手テック企業が試験中にAIチャットボット機能の一部を停止する措置を取りました。13万人以上の受験生が挑む非常に競争の激しい試験の公正さを守るため、ByteDance(抖音〔Douyin〕の親会社)のQAアプリでは試験問題に対する回答サービスを一時的に停止し「試験期間中は回答サービスを中断します」とのメッセージが表示されました。他にもAlibabaやTencentなどが自社AIの特定機能を停止したと伝えられ、当局もAIを悪用した予想問題詐欺やカンニング行為を厳しく取り締まっています。
https://aitopics.org/doc/news:FC4B4C63
⑩ 英政府、AI規制法の制定を先送りへ
イギリス政府は当初予定していたAIに関する規制の導入を遅らせ、より包括的なAI法案を準備する方針を明らかにしました。新法案ではAIの安全性確保や著作権保護などが盛り込まれる見通しですが、規制整備が先延ばしになることで無規制の状況が続くことへの懸念も専門家から指摘されています。政府は「包括的な法整備」に時間をかける姿勢ですが、急速に発展するAI技術に対し暫定的なガイダンス不足が課題となっています。
編集者まとめ
2番目の「Xのデータを勝手に使うな」という記事ですが、LLMO(AIのSEO)的にはちょっとした影響がありそうです。
というのも、AIが回答する際に、こういったSNSでの情報も参考にしていると言われていたから。
「○○で有名な商品を教えて」などの質問をした際に、X(Twitter)でよく言及されている商品をAIが考慮に入れている・・みたいなことですね。
SNSでの言及というのは時間軸が分かるので、リアルタイム性だったり、盛り上がってる盛り下がってるなどのトレンドも見ることができます。
それをChatGPTやGemini、Claudeなどが利用できなくなる、となると少なからず影響はありそうです。
3番目のChatGPTに「コネクター」が追加されたという話題ですが、この「外部ツールとの連携」というのが今のAI業界で一番盛り上がってるトピックスかもしれません。
別記事でご紹介しようと思っていますが、MCP、A2Aというキーワードがあり、外部ツールとの連携、他AIとの連携を各社が発表しています。要注目の分野です。