① WWDC 2025: AppleがAI機能を強化
Appleは開発者会議WWDC 2025にて、自社のAI基盤「Apple Intelligence」の機能強化を発表しました。チャットボット「ChatGPT」との連携により、絵文字生成機能「Genmoji」や画像生成アプリ「Image Playground」で、テキストや写真から多彩なスタイルの画像を作成できるようになります。またライブ翻訳機能も導入され、メッセージやFaceTime通話中にリアルタイムで翻訳字幕を表示し、音声通話では会話を自動通訳します。これらのAI機能はいずれも端末内AIモデルで動作し、オフラインでも利用可能です。さらに開発者向けに、iPhoneなどの端末内で動く大規模言語モデル(LLM)へのアクセスが公開され、プライバシーに配慮したAI機能をアプリに組み込めるようになりました。Appleは利便性向上を目指しつつも、競合のGoogleに比べAI分野での遅れを指摘されていますが、今回のアップデートで実用的でユーザーフレンドリーなAI体験の提供に注力しています。
② OpenAI、推論特化の新モデル「o3-pro」を公開
ChatGPTの開発元OpenAIは、高度な推論能力を持つ新しいAIモデル「o3-pro」を発表しました。これは今年初めに公開された推論モデル「o3」の強化版で、数学やプログラミングなど論理的思考を要する分野で問題を一歩ずつ解決する性能が向上しています。ChatGPTの有料版ユーザー向けに提供が開始され、旧モデル(o1-pro)に代わって搭載されました。またAPI経由でも利用可能で、入力100万トークン当たり20ドルの料金設定となっています。OpenAIによれば、専門家評価で前モデルより明確さや正確さが大幅に改善され、科学や教育、ビジネス文書作成などの幅広い領域で質の高い回答を示せるとのことです。新モデルはインターネット検索やコード実行などの外部ツール連携にも対応し、より複雑なタスクへの取り組みが可能になりました。ただし高性能化に伴い応答時間は長くなり、一部機能(画像生成や一時チャット保存など)は現時点で制限されています。OpenAIはこのモデルにより、ChatGPTの数学・科学分野での信頼性向上を図っています。
③ ディズニーとユニバーサル、AI画像生成の著作権侵害でMidjourneyを提訴
米大手映画会社のディズニーとユニバーサルは、画像生成AIサービス「Midjourney」が自社のキャラクターを無断で模倣したとして共同で提訴しました。訴状によると、Midjourneyは「底なしの盗作の温床」と表現され、ユーザーが「ダース・ベイダー」や「シュレック」など著名キャラクターの画像生成を指示すると、即座にそれらを模倣した画像を生成してしまうとしています。ディズニーとユニバーサル側は、AIによる生成画像も自社キャラクターの著作権を侵害しており、Midjourney社が必要な許諾や対策を講じていないと非難しています。また他社の生成AIサービスが特定の単語のブロックなど著作権保護の措置を取る中、Midjourneyはそうしたプロンプト制限や監視を怠っているとも指摘されています。原告側は陪審による審理と損害賠償を求めており、これはハリウッドと生成AIの間で初の本格的な法的対決となる注目のケースです。
④ Meta、AI動画編集ツールを発表 – 背景や服装を自動合成
Facebookの親会社Metaは、短い動画の背景や見た目をAIで変換できる新機能を公開しました。このAI動画編集ツールでは、あらかじめ用意された50種類以上のプリセット(例: 砂漠やアニメ風)から選ぶことで、自分の撮った数秒間の動画を指定のテーマに変換できます。例えば、自宅の庭で撮影したペットの動画を「砂漠で撮影した風景」に変えたり、自分の服装をタキシード姿に編集したりすることが可能です。操作はInstagramのフィルター感覚で簡単に行え、編集後の動画はFacebookやInstagramへワンタップで共有できます。現在この機能はMetaのAIアプリおよびウェブ版で期間限定の無料提供として米国など十数か国で展開されており、処理対象は動画の冒頭10秒までとなっています。記者のテストによると、生成結果は必ずしも完璧ではないものの、今後の改良によって品質向上が期待されています。Metaはこのツールで、一般ユーザーが手軽にAIによる動画加工を楽しめる環境を提供しようとしています。
https://www.theverge.com/news/685581/meta-video-editing-ai-preset-prompts
⑤ Amazon、生成AIで商品動画広告を自動作成するツールを一般提供
Amazonは出品業者向けの動画広告自動生成ツールを正式リリースしました。この「Amazon Ads Video Generator」は昨年ベータ版として提供されていたもので、商品画像やテキストからフォトリアルな短編動画広告を約5分で作り出すことができます。例えば腕時計の商品なら、人が腕時計を着用して時間を確認するシーンなど、商品を実際に使用している動画クリップをAIが生成します。出品者は複数提案される動画(最大6パターン)の中から好みのものを選び、自社ロゴを入れることも可能です。また既存のデモ映像やSNS動画から要点を抜き出して再編集する機能や、静止画からGIF風の短尺動画をワンクリックで生成する機能も搭載されました。このツールは米国のAmazon広告利用者に無料で開放されており、多くの中小事業者も手軽に動画広告を制作できるようになります。今後、Amazonのプラットフォーム上にはAIによって制作された動画広告が急増するとみられています。
https://www.theverge.com/news/685160/amazon-ads-ai-video-generator-us-launch-availability
⑥ Meta、Scale AIに約1.5兆円出資 – 創業者を迎え新AI研究所設立へ
Facebook親会社のMetaは、AIデータ企業Scale AI社の株式49%を約148億ドル(約1.5兆円)で取得する大規模出資計画を進めています。これは2014年のWhatsApp買収以来最大規模の投資で、Scale AI創業者のアレクサンドル・ワン氏をMetaに招き入れ、次世代AI研究を牽引する新チームを率いさせる狙いがあります。ワン氏はデータ精度を武器にした「戦時CEO」と称される人物で、Metaは同氏の知見を得て低迷していた自社AI戦略を立て直す考えです。Scale AIはOpenAIやGoogleなど主要AI企業に学習用データ整備を提供してきたスタートアップで、Metaも顧客の一社でした。今回の提携でMetaは同社の高品質なデータ資源へのアクセスを強化し、自社のAIモデル開発を加速させる構えです。ただ、この動きに対し大口顧客だったGoogleが関係解消を検討するなど波紋も広がっています。Metaは反トラスト訴訟中でもあり全面買収は避け49%取得に留めましたが、それでも巨額投資によってライバルに遅れを取ったAI分野の巻き返しを図る戦略とみられます。正式発表が近く、実現すればAI業界で注目の大型提携となります。
⑦ OpenAIアルトマンCEOの「穏やかなシンギュラリティ」宣言
ChatGPT開発元OpenAIのサム・アルトマンCEOは、自身のブログに今後のAI発展に関するエッセイ「The Gentle Singularity(穏やかな技術的特異点)」を公開し、今後10〜15年のビジョンを示しました。アルトマン氏は「我々は既にAIのイベントホライズン(事象の地平)を越えた」と述べ、汎用人工知能(AGI)の出現が避けられない段階に入ったと主張しています。また2026年にはAIが“新しい洞察”を発見できるようになる可能性を指摘し、2027年頃までに現実世界で役立つロボットが登場すると予測しました。さらに今後のAIは科学研究において人間には思いつかない仮説やアイデアを生み出すようになり、エネルギーや医療分野などで飛躍的な進歩をもたらすとしています。一方でアルトマン氏は、これらの技術革新が社会に与える衝撃にも言及し、仕事の在り方や社会契約が根本から変わる可能性を示唆しました。彼のビジョンは大胆かつ楽観的ですが、OpenAIの次の一手を占うヒントとも受け止められており、AI業界や社会に議論を喚起しています。
https://techcrunch.com/2025/06/11/sam-altman-thinks-ai-will-have-novel-insights-next-year/
⑧ Google、DeepMind幹部を新設の“AI統括責任者”に任命
GoogleはAI戦略の強化に向け、社内にチーフAIアーキテクト(最高AI統括責任者)のポストを新設し、傘下のDeepMindでCTOを務めるコライ・カブクチョール氏を任命しました。この役職はスンダー・ピチャイCEO直属のシニアバイスプレジデント級で、全社のAI開発と製品への統合を加速するのが狙いです。カブクチョール氏は2012年からDeepMindに在籍し、多くのAI研究成果を主導してきた人物で、今後もDeepMindのCTO職を兼務しつつ新役職を務めます。GoogleはChatGPTの登場以降、生成AI「Gemini」の開発や各種サービスへのAI搭載を急いでいますが、社内で培った強力なAIモデルを迅速に実用サービスへ落とし込む推進力が求められていました。今回の人事により、研究部門とプロダクト部門の連携を密にし、AI機能のシームレスな製品統合・開発サイクルの高速化・効率化を図る考えです。ピチャイCEOは社内メモで「当社の世界トップクラスのモデルをより速く、深く製品に組み込んでいく」と強調しており、GoogleがAI競争力強化に本腰を入れる姿勢が明確になりました。
⑨ 中国、大学入試で生成AI機能を一斉停止 – カンニング防止策
中国において、約1,330万人が受験する大学統一入学試験(高考:ガオカオ)の期間中、主要テック企業がAIチャットボット機能の一時停止措置を実施しました。ByteDance(抖音〈TikTok〉運営)の「豆包」や、Tencentの「鸚鵡(YuanBao)」、アリババの「通義千問(Qwen)」、そして新興の生成AI「DeepSeek」などが試験時間帯に質問応答や画像認識サービスを停止し、「試験中はサービスを中断します」と回答するようになりました。これは受験生がAIを使ってカンニングするのを防ぐ目的で、中国政府の要請に応じたものと見られています。また一部地域では試験監督にAI顔認識カメラや不審動作検知システムも導入され、試験会場でのささやきや視線の不自然な動きをAIが監視する仕組みも導入されました。中国当局は過去にない厳戒態勢で不正防止に臨んでおり、受験生からは「AIが使えず困った」との声も上がっていますが、人生を左右する重要試験の公正性確保のため大胆な措置に踏み切った形です。
⑩ ChatGPTが約34時間の大規模停止、サービス復旧へ
OpenAIの対話型AI「ChatGPT」で大規模なサービス障害が発生し、世界中のユーザーが約1日以上アクセスできない事態となりました。6月10日朝(米国時間)から応答エラーや極端な遅延が生じ始め、ヨーロッパ時間帯に入ると利用不能が拡大。OpenAIのステータスページでも「エラー率の上昇」を確認し、APIを含む複数サービスに影響が出たと報告されました。Downdetectorなどの外部サイトにも各国から「接続できない」「要求が多すぎるとのエラーが出る」等の苦情が急増し、OpenAIは原因調査と復旧作業を進めました。この間、ChatGPTや関連サービス(コード生成のSoraなど)が10時間以上にわたり停止し、何百万人ものユーザーが仕事や学習に支障を来す事態となりました。OpenAIは翌11日までに徐々にサービスを復旧させ、「大半のユーザーで利用可能になった」と発表しました。今回の障害はChatGPT史上最長級で、AIサービスへの社会的な依存度の高さと、その裏にある技術基盤の脆弱性が浮き彫りとなる出来事となりました。
https://www.techradar.com/news/live/chatgpt-down-june-10
編集者まとめ
amazonの動画広告ジェネレータすごいですね。
まだ粗い感じはしますけど、これだけ簡単に動画つくれちゃうと、世の中が動画広告で溢れる未来が見えますね。
ちょっと煩わしい未来かも。