① FTC、AIチャットボットの子どもへの影響を調査
米連邦取引委員会(FTC)が、OpenAIやMeta(Facebook)など主要企業に対し、子どもや未成年ユーザーがAIチャットボットを「友達」のように使う際の安全対策について情報提供を求める調査を開始しました。企業がチャットボットの有害な助言(自傷行為を助長する発言など)への対策や年齢制限をどう設けているかを調べ、保護者へのリスク説明状況も確認します。未成年者への悪影響に関する訴訟を受けてOpenAIは18歳未満利用者向けの保護策強化を表明しており、FTCは「米国がAI分野で主導的立場を維持しつつ、子どもの安全を確保するため実態把握が重要だ」と述べています。
https://www.cbsnews.com/news/ftc-ai-chatbot-inquiry-children-openai-xai-meta-snap-alphabet/
② MicrosoftとOpenAI、提携見直しで基本合意
米Microsoft社とOpenAI社は、両社の提携関係を再構築するための覚書(MOU)に署名し、OpenAIが非営利から営利企業へと再編できる道筋を付けました。この非拘束的合意により、Microsoftは今後もChatGPTなどOpenAIの先端技術への優先アクセスを維持しつつ、OpenAIは他社のクラウドサービスも利用できる柔軟性を確保します。OpenAIは当初非営利でしたが、莫大な資金ニーズに対応するため2019年に有限利益企業を設立しました。今回の再編では公益法人(PBC)の形で営利部門を運営し、従来の非営利団体が1000億ドル規模の株式を保有して引き続き支配権を持つ計画です。合意発表後、Microsoft株は時間外取引で2.4%上昇しました。
https://axios.com/2025/09/11/open-ai-microsoft-agreement-deal
③ Anthropic社の巨額和解案に裁判所が難色
ChatGPTの競合モデルClaudeを開発するAnthropic社が、訓練データに無断使用した大量の電子書籍を巡る集団訴訟で15億ドル(約2200億円)の支払いに合意しました。これは米国史上最大級の著作権訴訟和解案で、対象となる約50万冊の書籍1冊当たり約3,000ドルが著者らに支払われる計算です。しかしサンフランシスコ連邦地裁のウィリアム・アルサップ判事は、この和解案について「不明点が多すぎる」として当面承認せず、当事者に追加資料提出を命じました。「和解対象の著作物リストが不完全」である点などを問題視しており、「合意内容が十分明らかでない」との失望感を示しています。今後、当事者は判事の指示に従い対象書籍リストの確定や詳細資料を提出する必要があります。
④ 中国、NVIDIA製AIチップの購入を国内企業に禁止
中国政府が、自国の主要テック企業に対し米NVIDIA社の先端AI半導体の購入停止を命じたと報じられました。中国網信弁公室(CAC)はTikTok運営のByteDanceや通販大手アリババなどに対し、NVIDIAが中国向けに設計したAIチップ「RTX 6000(推定)」のテスト中止を指示したとされます。これを受け、NVIDIAの株価は発表当日にニューヨーク市場で一時2.6%下落しました。中国は米国からの高度半導体入手を制限される中、国内チップ育成を加速しており、今回の措置も自給自足を促す狙いとみられます。NVIDIAの黄(ジェンスン・フアン)CEOは「この報道には落胆した」と述べつつ、中国政府と協調して対応する姿勢を示しました。
https://www.aljazeera.com/economy/2025/9/17/china-bans-tech-firms-from-nvidia-chip-purchases-report
⑤ Amazon、出品者向け「AIエージェント」機能を発表
米Amazonは、自社サイトのマーケットプレイス出品者を支援する常時稼働型のAIエージェントを発表しました。従来のチャットボット型ツール「セラーアシスタント」を強化し、在庫管理や価格調整、広告文作成などの業務を自動化・提案できるようにしたものです。例えば、在庫一覧を分析し、売れ行きが鈍い商品を検知すると「価格を下げるか在庫処分するか」など対処策を提案します。許可すればAIが自動で在庫リスク対応も行い、出品者が戦略立案や商品開発に注力できるよう支援します。Amazonはこの「エージェント型AI」による出品支援で、中小出品者の業務効率化と売上拡大を図る考えです。
⑥ 1000以上の病気リスクを予測するAIモデル開発
欧州分子生物学研究所(EMBL)などの研究チームが、個人の将来10年以上にわたる疾病リスクを予測できる新しいAIモデル「Delphi-2M」を開発しました。この生成AIモデルは、大規模言語モデル(LLM)の手法を医療データに応用したもので、英国とデンマークで約230万人分の匿名化電子カルテデータを学習しています。がん、糖尿病、心疾患など主要疾患を含む1,000種以上の病気について「いつ・どの程度の確率で発症するか」を予測可能で、既存の単一疾患予測モデルに匹敵する精度を示しました。例えば「10年以内に特定のがんを発症する確率○%」といった形でリスクを提示し、医師が予防策や早期介入策を立てるのに役立てられると期待されています。
⑦ Meta、AR表示対応の新スマートグラス発表
米Meta(旧Facebook)は、自社初となるディスプレイ搭載の消費者向けスマートグラス「Ray-Ban Meta Display」を発表しました。メガネ型デバイスの右レンズに小型スクリーンを内蔵し、スマートフォンに表示される通知やテキストメッセージ、地図ナビなどをレンズ上に映し出せます。価格は799ドルで、9月30日発売予定です。手首に装着するリストバンド型コントローラーと連携し、手のジェスチャーで操作可能となっています。MetaのザッカーバーグCEOは「眼鏡はAIによる“スーパーインテリジェンス”を身近に引き出す理想的なフォームファクターだ」と述べ、AIを活用した日常支援ツールとして位置付けています。なお発表イベントではデモ中に一部音声コマンドが作動しないハプニングもありましたが、新スマートグラスは競合他社に先駆けた「身に着けるAIデバイス」として注目されています。
⑧ Oracle、Metaにクラウドサービス提供か – 2兆円規模の交渉
米大手ソフトウェア企業Oracleの株価が9月19日に前日比4%上昇しました。OracleがMeta社(Facebookの親会社)に対し、約200億ドル(約3兆円)規模のAIクラウド基盤を数年にわたり提供する契約を交渉中との報道を受けたものです。関係者によれば、OracleはMetaにAIモデルの訓練・実行に必要な大規模コンピューティング能力を供給し、Metaは高速な処理環境を確保する見通しです。これはOracleが今年7月にOpenAIとの間で結んだ大規模クラウド契約(5年間で3000億ドル相当)に続く動きで、AI需要の急増を背景にOracleは受注高を前年の4倍となる4550億ドルまで伸ばしています。今回のMetaとの契約がまとまれば、Oracleはクラウド市場でGoogleやAmazon、Microsoftに対抗する強力な足掛かりを得ることになります。
https://siliconangle.com/2025/09/19/oracle-shares-climb-reports-ink-20b-cloud-deal-meta/
⑨ ByteDance、画像生成AI「Seedream 4.0」発表 – Googleに対抗
TikTokの中国親会社ByteDance(バイトダンス)は、新たな画像生成AIモデル「Seedream 4.0」をリリースしました。同社は、Google DeepMindの画像生成モデル「Gemini 2.5 Flash Image(愛称:Nano Banana)」より高性能だと主張しており、社内評価ベンチマークでプロンプト(指示文)の忠実度や生成画像の品質で上回ったとしています。Seedream 4.0は画像の生成と編集を一体化したオールインワン設計が特徴で、テキスト入力だけでポスターやインフォグラフィックを含む高精細な画像を作成できます。中国国内ではByteDance傘下の「锦梦(Jimeng)」「豆包(Doubao)」といったAIアプリで提供され、法人向けにはクラウドサービス(火山エンジン)でも利用可能です。急成長する中国の生成AI市場で、Seedream 4.0は競合のGoogle系モデルに対抗すべく、処理速度を10倍以上高速化しつつ価格も抑えていると報じられています。
⑩ 英AI、予測コンテストで人間専門家に迫る健闘
AIスタートアップ「ManticAI」が、将来の出来事を予測する国際コンペティション「Metaculus Cup」において、参加者数百人中8位に入賞しました。この大会では夏季に起こり得る60の事象について確率予測を競い合い、ManticAIのAIシステムはトランプ前大統領とマスク氏の対立から英国保守党党首交代の可能性まで幅広いテーマで人間と予測精度を競いました。最終成績でトップの人間予測者には及ばなかったものの、「昨年はAI最高位が300位程度だったのに比べ飛躍的進歩だ」と専門家は驚きをもって受け止めています。ManticAIは問題を細分化し複数の大規模言語モデル(OpenAI, Google, DeepSeekなど)に役割分担させる手法で予測を行っており、「データの反復や人間のバイアスに囚われない独自の推論が可能だ」と開発者は述べています。将来的にAI予測はさらに精度向上し、専門家を凌駕する可能性もあると期待されています。
編集者まとめ
5本目の記事で紹介されていたAmazonのAIエージェントは非常に興味深いものです。これまで販売者が時間をかけて分析から実行まで行っていた作業を、AIが自動で代替してくれるという仕組みです。従来は専門の分析担当者が担っていた領域ですが、AIが処理できるデータ量を考えると、間違いなくAIエージェントの方がより賢明な提案を行い、さらに実行まで任せられるようになるでしょう。
近年「エージェント型AI」が盛んに取り上げられていますが、その輪郭はまだ曖昧に感じている人も多いように思います。簡単に言えば、エージェント型AIとは「指示を与えると自律的に考え、必要に応じて周辺のサービスを活用し、目的達成まで自動で実行してくれるAI」のことです。
例えば、これまで部下やスタッフに依頼していた業務をAIが代行してくれます。
・営業
見込み客リストを調査 → メール作成 → CRMツールに登録 → 返信を監視。
・リサーチ
与えられたテーマをWeb検索 → 複数の記事を要約 → レポート化。
・秘書
カレンダーやメールを確認 → スケジュール調整 → 必要に応じて予約サイトで実行。
このように、人はAIと対話をしながら最終判断を下せばよい状況が整いつつあります。非常に便利になる一方で、「どんな対話をするか」「どんな判断を下すか」が今後ますます重要になっていくでしょう。自分自身の判断力を磨かなければ、AIを使いこなせずに取り残される、あるいは誤った判断を下してしまうリスクもあるのです。