1. そもそも AI エージェントとは?
- 従来のチャットボット … 質問に答えたら終わり。1回だけのやりとりをするいわば電卓。
- AI エージェント … 必要な手順を自分で選択しながらツールを動かし、仕事を完了させる。家事をこなす ロボット のような存在。
エージェントの例:見積ボットが原価を調べ、利益を計算し、PDF を生成/在庫ボットが在庫を調べ、仕入れシステムへ発注。
例のようにAIが各種ツールを動かすには「ツールの呼び出し方・データの渡し方・返り値の形」を決めた 配線図 が必要です。この配線図を誰でも使えるように同じ書式にしたのが MCP と A2A です。
2. なぜ今 MCP・A2A が注目されるのか
2‑1. ツール乱立で“橋渡し作業”が増えすぎた
営業、在庫、請求……。ツールをまたぐたびに CSV を出したり、手でコピペしたり。便利なツールが増えて作業自体は楽になりましたが、ツール同士を橋渡しするための「見えない作業」が膨らんでいます。
2‑2. “共通マニュアル”の誕生
- MCP … AI がツールを呼ぶときの共通コンセント。
- A2A … AI 同士がバトンを渡す共通ベルト。
取扱説明書(スキーマ)を 1 枚書くだけで、新ツールも新 AI もすぐ仲間入り。連携コストは おおむね 1/10 まで下がると報告されています(Anthropic 調べ)。
2‑3. 大手IT企業による採用
- Anthropic:MCP をオープンソースで公開。
- Microsoft:Windows 11 に MCP を標準搭載へ(Build 2025 発表)。
- Google:A2Aオープンプロトコルを発表。
2‑4. 従来型自動化ツールとの違い(ざっくり比較)

3. MCP = ツールを束ねる「共通コンセント」
3-1. 家電にたとえると(ロボット掃除機+空気清浄機+エアコン篇)
- 道具(家電)
- ロボット掃除機 … 床のゴミを吸い取る
- 空気清浄機 … 空気中のホコリを除去
- エアコン … 温度と空気循環を調整
- 取扱説明書(Action Schema)
- それぞれの家電に「どの信号を送れば動くか」「終わったらどう知らせるか」を 1 枚のメモにしておく。
- 例:
POST /robot/v1/clean {"area":"living"}
⇒"status":"done"
を返す … など。
- 電源タップ(MCP サーバー)
- 3 枚のメモをまとめて置いておくハブ。AI はここ経由で家電を安全に操作する
- 動作の流れ
- 掃除機が掃除完了を検知し、MCP サーバーへ「done」を返却。
- 受け取った 空気清浄機 が 10 分だけ強運転。
- ホコリが落ち着いたら エアコン が省エネモードに切り替え、室温を整える。
ポイント
- 取説メモは最初に 1 回書くだけ。以降は AI が自動で読み取り、3 台を連携させる。
- 新しい空気清浄機に買い替えたら メモを 1 枚差し替えるだけ。ソフト改修は不要。
- これが会社の業務ツールなら
- 掃除機 → 請求書発行
- 空気清浄機 → 督促メール送信
- エアコン → 会計ソフト記帳
と置き換えられる――つまり 「社内システムを家電感覚でつなげる」のが MCP なのです。
3‑2. 導入 4 ステップ(最短 1 週間)

4. A2A = AI がバトンを渡す「工場のベルトコンベア」
- ベルトに箱(データ)を流し、工程ごとに専門機械(AI)が処理。
- 途中で故障があれば代替機が自動で肩代わり。
- 工程の順番を変えたり工程を増やしたりするのも設定だけで OK。
製造:需要予測 → 発注 → 納期計算
営業:リード評価 → 見積 → 契約書作成
CS:問い合わせ分類 → 回答案作成 → 担当割当…など。
AIが順番に動いていくイメージ。
5. MCP × A2A を両方そろえると?
- 縦配線(AI → ツール) が MCP。
- 横配線(AI ↔ AI) が A2A。
この 2 つで「社内システム ↔ AI ↔ AI ↔ システム」が自動で回る ミニ工場 が完成します。
6. 企業が得る 5 大メリット
- 配線設定が 1/10 … 新ツール追加は取説 1 枚。
- 24 時間自動処理 … 夜間に請求書発行&督促メールまで。
- ノウハウが見える化 … 取説そのものが社内マニュアル。
- ロックイン回避 … ツールも AI も後で自由に入れ替え。
- 段階導入 … まず MCP → 効果確認 → A2A 拡張。
7. 導入ロードマップ

8. 導入事例で効果を確認
- Windows AI Foundry … Windows 11 内蔵 MCP で設定変更や検索を AI が代行 → 手作業 90% 減。
- Google A2A Codelab … 見積→在庫→決済 AI を A2A で接続 → コード 50 行で完成。
- ある会計 SaaS 企業 … 複数会計ツールを MCP で統合 → 経理工数 70% 減。
9. よくある質問(Q&A)
Q. IT 担当がいなくても導入できる?
GUI で取説を書ける MCP SaaS(Make/n8n など)があるので外注なしでも可能です。
Q. 社内データを外に出さずに使える?
オンプレ版 MCP サーバーがあり、社内 LAN 内だけでも動きます。
Q. コストは?
プロトコル自体は無料。必要なのはサーバー費(または SaaS 月額)と取説作成の工数のみ。
10. 未来像 —— "AI 指揮者" がいる職場
- 業務アプリ = 楽器
- AI = 演奏者
- 人 = 指揮者
早く導入した会社ほど取説(Action Schema)を蓄積し、AI オーケストラを指揮できるようになります。
11. まとめ
- MCP … ツール接続を統一する共通コンセント。
- A2A … AI 同士をつなぐベルトコンベア。
- 導入順 … まず MCP で小さく始め、A2A で横展開。
この 2 つの規格が残業とコピペを丸ごと消します。次のステップは、あなたの会社で 最初の Action Schema を書く ことです。