海外のAIニュースまとめ(9/1〜9/7)

atmaLab編集者
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September 8, 2025
海外のAIニュースまとめ(9/1〜9/7)
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① 古典的AI概念「ワールドモデル」の復活

AI研究の最前線で「ワールドモデル」と呼ばれる古典的なアイデアが再注目されています。ワールドモデルとは、AIが内部に簡易な「世界のモデル(縮図)」を持ち、現実世界で行動する前にそのモデル内で予測や判断を試す仕組みです。Meta(メタ)社のヤン・ルカン氏やDeepMindのデミス・ハサビス氏など著名研究者たちが、汎用AI(AGI)の実現にはこのアプローチが不可欠だと強調しています。人間も頭の中に現実世界のモデルを持つことで危険を予測して回避できるように、AIにも「頭の中の地球儀」を持たせようという発想です。もっとも「ワールドモデル」と一口に言っても、その具体的な作り方やどこまで詳細に世界を再現するべきか、研究者の間でも意見が割れており、今後も議論と研究が続きそうです。

https://www.quantamagazine.org/world-models-an-old-idea-in-ai-mount-a-comeback-20250902/quantamagazine.org

② Microsoft、米政府職員にAIアシスタント無償提供

米Microsoft社は、アメリカ連邦政府向けに自社の生成AIアシスタント「Microsoft 365 Copilot(コパイロット)」を一部無償提供する方針を発表しました。これは米政府調達局(GSA)との大型契約の一環で、今後最大数百万人の公務員が職場のPCでCopilotを無料で試せるようになります。契約全体ではクラウドサービスの割引提供も含まれ、政府全体で初年度最大30億ドルのコスト削減効果が見込まれるとされています。生成AIを行政業務に広く展開する狙いで、既にGoogleやAWSも類似の官公庁向け割引契約を結んでいます。米政府はAI活用を推進しつつ、職員教育やデータ安全にも配慮しながら導入を進める構えです。

https://www.reuters.com/world/us/microsoft-discount-cloud-services-us-government-2025-09-02/

③ 元Salesforce社長のAIスタートアップ Sierraが3.5億ドル調達

米セールスフォース社で社長を務めたブレット・テイラー氏が共同創業したAI企業「Sierra(シエラ)」が、シリーズBラウンドで3億5千万ドル(約520億円)の資金調達を発表しました。この調達により企業評価額は100億ドル(約1.5兆円)に達し、わずか創業1年半のスタートアップとして異例の高評価となっています。Sierraは企業向けのカスタマーサービス用AIエージェントを開発しており、SoFiやBrexなど数百社の顧客を既に獲得しているといいます。今回の大型資金はGreenoaks Capital社が主導し、SequoiaやBenchmarkなど著名ベンチャーキャピタルも参加しました。生成AIブームの中、経験豊富な経営陣への市場の期待がうかがえる事例です。

https://techcrunch.com/2025/09/04/bret-taylors-sierra-raises-350m-at-a-10b-valuation/

④ 米ホワイトハウス、テック企業とAI教育強化を宣言

米ホワイトハウスでAI人材育成に関するイベントが開かれ、Amazon、Google、Microsoftなど大手テック企業が、AI時代に向けた国民の教育支援を約束しました。このイベントにはメラニア・トランプ米大統領夫人がホストとして出席し、各社CEOがそれぞれのコミットメントを発表しました。具体的には、無料のAI学習教材の提供や、公教育カリキュラムへのAI関連科目導入支援、地域コミュニティでのデジタル研修などが含まれます。狙いはAIによって仕事が変化する時代に備え、労働者や学生のスキル向上を図ることです。政府と民間が連携し、AIに関するリテラシー教育や職業訓練を拡充する取り組みが本格化してきました。

https://www.theverge.com/policy/772084/amazon-google-microsoft-white-house-ai-education

⑤ ワーナー、大手スタジオ連合でMidjourneyを提訴

米娯楽大手ワーナー・ブラザース・ディスカバリーは、画像生成AIサービス「Midjourney(ミッドジャーニー)」を相手取り、著作権侵害の訴訟を起こしました。Midjourneyがバットマンやスクービー・ドゥーといった有名キャラクターの“そっくりな”画像を無数に生成できることが問題視され、ディズニーやユニバーサルが先行して提訴していた裁判にワーナーも加わる形です。原告側はMidjourneyが自社の著作物を無断で学習に使用し、ほぼ完全な複製画像を作れるようにしたと主張。提示資料には、スクービー・ドゥーの首輪の色や毛並みまで元キャラと一致するAI画像が示されています。ハリウッドでは脚本家・俳優のストライキでもAIによる無断利用が争点となっており、今回の訴訟はAIと著作権の境界を巡る今後の法的指針として注目されています。

https://www.latimes.com/entertainment-arts/business/story/2025-09-04/batman-superman-studio-warner-bros-sues-ai-company-midjourney

⑥ OpenAI、ChatGPT「性格」担当チームを社内再編

ChatGPT開発元のOpenAI社が、対話型AIの「口調」や応答スタイルを設計してきた社内の小チーム「モデル行動チーム(Model Behavior Team)」を再編成しました。このチームはChatGPTの返答がユーザーに媚びて迎合し過ぎないよう調整したり、政治的偏りを是正するなど、AIの“人格”を形作る重要な役割を担っていました。再編ではこのチームをより大規模な「ポストトレーニング(後処理)チーム」に合流させ、AIの個性づくりを基盤技術の開発と一体化する方針です。また創設者の一人でリーダーだったジョアン・ジャン氏は、新たに「OAI Labs」という別プロジェクトを立ち上げ、人とAIの新しい協働インターフェース研究に取り組むとのことです。OpenAIがチャットAIの人格面を今後さらに重視し、核心技術として位置づける姿勢の表れと言えます。

https://techcrunch.com/2025/09/05/openai-reorganizes-research-team-behind-chatgpts-personality/

⑦ Anthropic社、著者との集団訴訟で約15億ドル支払い和解へ

米AI企業Anthropic(アンソロピック)が書籍の無断学習を巡る著者らとの集団訴訟で、少なくとも15億ドル(約2200億円)を支払う和解に合意しました。訴えたのはベストセラー作家らを含む多数の著者で、自分たちの著書が無断で同社のAIチャットボット「Claude(クロード)」の学習データに使用されたと主張していました。この和解金額は著作権訴訟の和解金として史上最大規模で、AI業界における初の大きな著作権問題の決着例となりそうです。合意が承認されれば、対象となる約50万冊の書籍それぞれに平均3000ドル程度が支払われる計算です。裁判所は12月の公判を控えていましたが、敗訴すればAnthropic社は経営が揺らぐ数十億ドルの賠償もあり得たと専門家は見ています。AIによる著作物の無断利用に一石を投じる歴史的和解となりました。

https://www.theguardian.com/technology/2025/sep/05/anthropic-settlement-ai-book-lawsuit

⑧ Apple、AI学習への書籍無断使用で作家に提訴される

米Apple社が、自社のAI開発において著作権で守られた書籍を無断利用したとして、米国人作家2名から集団訴訟を提起されました。訴状によると、AppleはGrady Hendrix氏やJennifer Roberson氏ら原告の作品を許可や対価なしにAIシステムの訓練データに使用したとされています。原告側は「Apple社はこの有望な事業で、著者への報酬支払いを一切試みていない」と非難しています。この訴訟は、OpenAIやMetaなど他社に対する同種の著作権訴訟の流れに続くものです。ちょうど同日、Anthropic社が別の著作権集団訴訟で15億ドル支払いの和解に応じたことも明らかになっており、テック業界全体でAIの学習データと知的財産の扱いが問われる事態となっています。

https://www.reuters.com/sustainability/boards-policy-regulation/apple-sued-by-authors-over-use-books-ai-training-2025-09-05/

⑨ OpenAI、専用AIチップ開発へ – Broadcomと提携か

ChatGPTの開発元OpenAI社が、自社専用のAI半導体チップを開発し、来年にも量産開始する見通しであることが報じられました。英フィナンシャル・タイムズの取材によれば、OpenAIは米半導体大手のブロードコム社と共同でカスタムAIチップを設計しており、既に100億ドル規模の発注契約も交わされたといいます。OpenAIは現在、NVIDIA社製のGPU(汎用グラフィック処理装置)に大きく依存していますが、独自チップによりコスト削減や安定供給を図り、競争力を高める戦略です。GoogleやAmazonもそれぞれ独自AIチップを開発・運用していますが、OpenAIもこれに倣い、ハードウェア面からAI基盤を強化しようとしています。ただしこの計画についてOpenAIから公式な発表はなく、実現時期や性能の詳細は今後注目されます。

https://www.theverge.com/news/772433/openai-custom-chip-production-broadcom

⑩ 子どもに人気沸騰?「イタリアン脳腐敗」AI動画

TikTokやオンラインゲームで「イタリアン・ブレインロット(Italian Brain Rot)」と呼ばれる奇妙なAI動画コンテンツが子ども達の間でブームになっています。例えばコーヒーカップの頭を持つバレリーナ「バレリーナ・カプチーナ」が重低音のイタリア語もどきソングを歌う動画は、TikTokで5500万回以上再生されました。他にもワニの頭を持つ飛行機(Bombardiro Crocodilo)やサボテンの胴体を持つゾウ(Lirilì Larilà)などナンセンス極まりないキャラクターが次々登場し、そのシュールさが子ども達には「意味不明で逆に面白い」と大ウケなのです。専門家によれば、こうした「脳が腐るほどくだらない」動画は子ども世代のユーモア文化の一端であり、有害というより単なる娯楽だと指摘されています。親世代には理解不能なこの現象も、子ども達にとっては仲間内の共通言語となっているようです。

https://www.livenowfox.com/news/what-is-brain-rot-ai-kids

編集者まとめ

7記事目の著作権訴訟〜15億ドルの和解ってのはちょっと衝撃的ですね。
間違いなくこの先「我も我も」となるはずで、IP業界、弁護士業界は沸き立ってそうです。

そして3記事目の創業1年半で1.5兆円の時価総額というのにも驚きました。
Sierraというのは、カスタマーサポート用のAIエージェントを提供している会社でして、たとえばECサイト上のチャットで質問した際にAIが回答する。という、まぁ日本にもたくさんあるようなサービスです。
ただ、ここが他と違うのは「成果課金」にしているところ。正しい回答を返した場合に企業に課金してるらしいです。
もちろん、課金するためには正確な回答が必要なので高性能のAIを開発する必要があるのですが、そこは百戦錬磨の経営陣(元Salesforce、元Google、元OpenAI)の元に集った精鋭等がそれを可能にしている。
更に、導入社数が増えれば増えるほど、データが増え(回答の良い、悪いも含め)、精度は上がっていきますので右肩上がりの業績が期待できる、ということなんだと思います。
すでに大企業数百社が使っていて、売上は1年半で100億円を超えてるとのこと。勉強になります。

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