① メタ、超知能開発に向け新組織「Meta Superintelligence Labs」発足
Meta社は人工知能 (AI) 研究部門を再編成し、新組織「Meta Superintelligence Labs」を設立しました。Scale AI創業者のアレクサンドル・ワン氏が最高AI責任者に就任し、汎用人工知能(AGI)の開発加速とAI関連の新収益源創出を目指します。背景にはMetaの最新AIモデルへの評価が伸び悩み、OpenAIやGoogleなど競合の台頭を許している危機感があります。ザッカーバーグ氏は6月にかけて自ら優秀なAI人材の引き抜きを主導し、大規模な投資で巻き返しを狙っています。
② EU、AI規制法の導入延期せず予定通り実施へ
欧州連合(EU)はGoogleやMetaなど100社以上のテック企業からAI規制法(AI Act)施行延期を求める声が上がる中でも、当初のスケジュール通りに施行を進める方針を明言しました。欧州委員会の報道官は「時計を止めることはない」と述べ、遵守の猶予期間(グレースピリオド)は設けない考えを強調しています。
https://techcrunch.com/2025/07/04/eu-says-it-will-continue-rolling-out-ai-legislation-on-schedule/
③ 欧州出版社団体、GoogleのAI要約機能を独禁法違反で提訴
欧州の独立系出版社グループが、Google検索の生成AI要約機能(「AIオーバービュー」)についてEUに独占禁止法違反の申し立てを行いました。出版社側は、このAI要約がウェブ記事の内容を無断利用し読者のサイト訪問を減らしていると主張し、出版社が自社コンテンツをAI学習や要約に使われないよう拒否する手段が実質ない現状を問題視しています。
④ 米上院、州によるAI規制10年禁止の条項を法案から撤回
米国では、トランプ大統領の大型法案に含まれていた「州によるAI規制を10年間禁止する」条項が議論となりました。上院ではこの条項に与野党双方から反発が起こり、一時は期間を5年に短縮し児童保護などの例外規定を加える案が出されましたが、最終的にほぼ全会一致で条項自体が削除されました。
https://www.businessinsider.com/senators-strike-ai-provision-from-big-beautiful-bill-2025-7
⑤ 2025年上半期、AIで約9万4000人の技術職が消失との報告
2025年上半期時点で、テック業界では約9万4千人の雇用が既にAIによって失われたとの報告があります。単なるコスト削減ではなく、企業がAI戦略に沿って人員を再配置しているためで、生成AIツールが担える業務は人手を減らし、その分AIエンジニアやデータ科学者などの採用に注力する動きが広がっています。
https://www.finalroundai.com/blog/ai-tech-layoffs-mid-2025
⑥ 米、AI半導体のマレーシア・タイ輸出規制を検討 中国への流出懸念
米トランプ政権は、中国への先端AI半導体技術流出を防ぐため、NVIDIA製など高性能AIチップのマレーシアおよびタイへの輸出を規制する方針を検討しています。東南アジア経由で中国が先端GPUを入手する「抜け道」を塞ぐ狙いで、米商務省が輸出規制の新草案を準備中と報じられました。ただし規制内容はまだ草案段階で、変更の可能性もあります。
https://wccftech.com/the-us-is-considering-ai-chip-restrictions-on-malaysia-and-thailand/
⑦ Cloudflare、サイト運営者がAIボットに課金できる市場を開始
インターネット基盤企業Cloudflareは、ウェブサイト運営者がAIクローラー(情報収集ボット)に対しサイト内容収集の料金を課金できる新サービス「Pay per Crawl」を開始しました。サイト側はボットごとに有料許可・無料許可・全面ブロックを選択でき、AI時代におけるコンテンツ提供者の新たな収益モデルとして注目されています。
⑧ Google、6月に多彩なAI新機能を発表
Googleは6月、各種サービスにおけるAI機能強化を相次いで発表しました。具体的には、音声入力対応の新しい検索ツール、AIノートブック「NotebookLM」での共同編集機能、研究者向けゲノム解析AI「AlphaGenome」などで、教育・研究から検索まで幅広い分野でAI活用を拡大する内容です。
https://blog.google/technology/ai/google-ai-updates-june-2025/
⑨ AIチャットボット、健康情報で偽回答を生成可能との研究
オーストラリアの研究チームが、ChatGPTなど主要AIチャットボットに誤った健康情報をもっともらしく回答させる設定が容易に可能であることを明らかにしました。例えば「日焼け止めは皮膚がんを引き起こすか?」といった質問に対し、偽の医学論文の引用付きで科学的に見える誤答を生成できました。5種類のモデルのうちAnthropic社のClaudeだけが半数以上で回答を拒否し、安全策次第で不正確情報の拡散を抑制できる可能性も示されています。
⑩ AI活用で2035年までに年間最大54億トンの排出削減も可能=研究
英ロンドン大学(LSE)とSystemiqの研究によれば、AIを発電・運輸・食料といった主要産業分野に応用することで、2035年までに年間32〜54億トン相当の温室効果ガス排出を削減できる可能性があります。これはAIシステムの電力消費による排出増加を大きく上回る規模で、AIが気候変動対策(ネットゼロ移行)の「前例のない機会」になり得ると報告されています。
編集者まとめ
②のEUによるAI規制法について簡単に紹介します。
EUのAI規制法(AI Act)は、AIをリスク別に4段階に分け、それぞれに規制を課そうとしています。
1. 許容できないリスク(全面禁止)
人の行動や感情を不当に操作するAI、公共空間でのリアルタイム顔認識など、社会的に危険性が高い用途はすべて禁止されます。
2. 高リスク(厳格要件+認証義務)
医療診断、教育評価、採用選考、交通・エネルギー管理など、人の生命や基本的権利に直接関わる用途で使われるAIは、第三者機関の適合性評価(認証)を受ける必要があります。
3. 限定リスク(表示義務のみ)
チャットボット、翻訳、商品レコメンドなど、誤った動作をしても大きな害が生じにくい用途は、単に「この機能はAIが生成しています」と利用者に知らせる表示だけ求められます。
4. 最小リスク(規制対象外)
スパムフィルタやデータ整形など、ほとんど危険性がない用途は規制の対象外です。
施行スケジュール
- 2024年8月1日:法律そのものが発効。
- 2025年8月:高リスクAIモデルへの規制(品質管理や監査など)が順次適用開始。
- 2026年8月:一般的なAIモデルへの情報開示義務がすべて発動予定
EUが制定したデータ保護規則であるGDPRは世界的に広がり、類似したルールを取り入れる国がどんどん増え、いまや人口の8割をカバーするくらいになっているそうです。
そう考えると、今回のEUによるAI規制法が、GDPRと同じように世界的なベンチマークになることも有り得るのかなと思ってます。
2番目の「高リスク」で影響を受ける企業が多そうですね。というのと、評価機関ビジネスも生まれるんでしょうね。