① AI生成音声で米政府高官になりすまし発覚
米国務省は2025年7月、AIで作成した偽の音声によりマルコ・ルビオ米国務長官になりすました詐欺未遂が発生したと各国の在外公館に警告しました。わずか数秒の録音から本人そっくりの声を再現できるAI音声クローン技術の悪用によるもので、FBI(米連邦捜査局)も同様の手口に対する注意を呼びかけています。
https://www.npr.org/2025/07/09/nx-s1-5462195/impostor-ai-impersonate-rubio-foreign-officials
② Microsoft、AI活用で5億ドルのコスト削減と大量解雇が話題に
米Microsoft社は社内プレゼンテーションで、AI導入によりコールセンター業務だけで昨年5億ドル以上のコスト削減を達成したと明かしました。営業や顧客対応、ソフト開発の生産性も向上したといいます。一方で同社は今年に入り約1万5千人の人員削減を実施しており、AIによる効率化と雇用削減のタイミングに社内外で議論が生じています。
③ NVIDIA、世界初の時価総額4兆ドル企業に
米半導体大手NVIDIA社の株価が急伸し、同社の時価総額が一時4兆ドル(約560兆円)を突破しました。これは世界で初めて時価総額が4兆ドルに達した企業となったことを意味します。AI需要の拡大を背景に株価が過去最高値を更新し、Wall Street(米金融界)におけるAIブームへの期待の高さを示しています。NVIDIAの企業価値はイギリス上場企業の合計を上回る規模に達しており、AIブームがもたらす経済インパクトの大きさが浮き彫りになりました。
④ AIロボットが豚の臓器で外科手術、100%成功を達成
米ジョンズ・ホプキンズ大学の研究チームは、AIで訓練した外科手術ロボット「SRT-H」により、摘出した豚の胆嚢を用いた自律手術に8例連続で100%の成功率を収めました。このロボットは人間の外科医の手術映像で機械学習しており、切除やクリップ留めなど一連の処置を人手を介さず正確に実行できました。手術中にミスを自動修正し道具交換も指示するなど、人間の熟練医に匹敵する動作を見せたといいます。研究者は「完全自律の軟部組織手術への画期的な一歩」と評価しています。実際の患者への適用には呼吸や出血への対処など課題も残りますが、人間の外科医が複数の手術ロボを監督する未来像も語られています。
⑤ AIブラウザ「Comet」をPerplexity社が発表
米スタートアップのPerplexity社はAIを組み込んだ独自のウェブブラウザ「Comet」を公開しました。このブラウザでは同社のAI検索エンジンが標準搭載され、検索結果をAIが要約して提示します。また「Comet Assistant」というAIエージェントが内蔵されており、表示中のページ内容を解析して質問に答えたり、メールの要約やタブ管理、ネットショッピング代行などのエージェント機能を提供します。当初は月額200ドルの有料プラン利用者と招待者に限定提供され、将来的にGoogle Chromeに対抗するAIブラウザとしてユーザー拡大を目指しています。
https://www.theverge.com/news/703037/perplexity-ai-web-browser-comet-launch
⑥ チェコ政府、中国AI「DeepSeek」を公共機関で禁止
チェコ共和国政府は、中国のAIスタートアップ「DeepSeek」が提供するあらゆるサービスの公共部門での使用を禁止しました。国家の重要データが中国にあるサーバーへ保存されることで安全保障上のリスクになるとの懸念からです。中国企業は自国政府への協力義務があるため、利用データが中国当局に提供され得ると判断しました。同様の措置はドイツ、イタリア、オランダでも講じられており、AI技術に地政学リスクが伴うことを示す事例となっています。
⑦ EU、汎用AIの自主的実務規範を策定
欧州委員会は、生成AIなど汎用AIモデルの提供企業が自主的に従うための「AI実務規範(コード)」を発表しました。この規範はEUの包括的なAI規制(AI法)の施行を見据えたもので、サインした企業には法的な確実性が提供されます。規範に沿う企業は、自社のAIモデルを訓練したデータの概要を公開し、ウェブクロールで収集した著作物の扱いを透明化することや、不適切な生成コンテンツの防止策を講じることが求められます。また高度なモデル提供者には安全・セキュリティ面のリスク分析枠組みの構築も義務付けられました。このコードへの署名は任意ですが、不署名企業は法的予見性を得られないため、大手各社に署名を促す狙いがあります。AI法の関連規則は2025年8月から段階施行されますが、新モデルへの厳格な適用は1年後になる見通しです。
⑧ 中国発の高性能AIモデル「Kimi K2」を無料公開
中国のAIスタートアップMoonshot AI社が、新たな大規模言語モデル「Kimi K2」をオープンソース(無料公開)でリリースしました。全体で1兆パラメーター規模のモデルで、特にコード生成やツールの自律利用などエージェント的なタスクに強みを持つとされています。一部のベンチマークテストでは、Kimi K2はOpenAIのGPT-4に匹敵、あるいは上回る性能を示し、数学問題やプログラミング課題で既存のオープンソースモデルを凌駕しました。巨額の資金を投じる米国勢に比べ、はるかに少ないコストで同等以上の成果を達成したとの分析もあり、無償公開によって開発者コミュニティの拡大と国際的な影響力向上を狙う中国勢の動きとして注目されています。
https://venturebeat.com/ai/moonshot-ais-kimi-k2-outperforms-gpt-4-in-key-benchmarks-and-its-free/
⑨ OpenAI買収断念のAI企業、人材ごとGoogleへ
米AIスタートアップのWindsurf社(プログラミング支援AIの開発企業)を巡り、買収を試みていたOpenAI社との交渉が決裂し、代わってGoogleが同社の主要人材と技術ライセンスを獲得する契約を締結しました。Googleは約24億ドル(約3,360億円)のライセンス料を支払い、一部の技術を非独占的に利用する権利を得ますが、Windsurf社自体の株式や経営権は取得しません。WindsurfのCEOら研究チームはGoogle DeepMind部門に移籍し、同社が開発中の次世代AI「Gemini」においてエージェント型のコーディングAI開発に従事する予定です。AI業界で急成長するコード生成分野を巡り、巨額のアクハイア(人材買収)による人材獲得競争の激しさを示す動きとなりました。
https://www.theverge.com/openai/705999/google-windsurf-ceo-openai
⑩ SpaceX、Musk氏のAI企業xAIに20億ドル出資へ
米実業家イーロン・マスク氏の宇宙企業SpaceXが、同氏が率いるAI新興企業xAIに対し20億ドル(約2,800億円)を出資する見通しであると報じられました。この出資は合計50億ドル規模の資金調達ラウンドの一部とされ、SpaceXによる他社への投資として過去最大級になります。xAIは今年、マスク氏が所有するSNS「X社(旧Twitter)」と合併しており、同社の対話型AI「Grok」はSpaceXの衛星通信サービスStarlinkのカスタマーサポートに既に活用されています。マスク氏はGrokを「世界で最も賢いAI」と称しており、将来的には自動車メーカーTeslaの人型ロボット「Optimus」への搭載も見据えています。自前の複数事業を連携させながら、OpenAI社など競合他社に対抗する戦略が鮮明になっています。
https://techcrunch.com/2025/07/13/elon-musks-spacex-might-invest-2-billion-in-musks-xai/
編集者まとめ
2番目のMicrosoftのAIによるコスト削減、大量解雇のニュースについて。解雇された側からするとたまったもんじゃないですが、AIを全面に打ち出しているMicrosoft(会社)としてはクライアントやユーザーに対して模範を示す必要があるので、致し方ないというか、アグレッシブというか。
尚、解雇された人の職種としては、カスタマーサービス(コールセンター)、営業、エンジニアが多かったそうです。
AIによる代替が容易に想像できる職種ではあります。
あと4番目の手術ロボットも気になります。
世界中どこの病院でも最高レベルで且つ正確な手術が受けられる未来があるとするとそれは嬉しいことです。且つ、ロボットには休憩も必要ないでしょうから長時間の手術にも向いています。今後、開発や量産が進むにつれてコストもどんどん安くなっていくでしょうから、そんな未来があるというのは希望でしかないです。